時々、こういう注文を真顔でおっしゃる方がいます。
お見合い写真ではありませんから、加工修正をしても似ていない場合、「訴えられそうで怖い!」というのが本音です。
似顔絵を書き始めた頃に、写真で描いて欲しいという依頼が来ました。
送られてきた写真で判別できる顔の大きさが1センチ×1センチほどで、髪型もバックの色との差がなく見えづらいものいでした。
年齢は50歳を超えた大先輩のベテラン職員さん。
今も未熟ですが、当時の腕前はもっともっと未熟。
不満足な似顔絵をスタンプに加工して納品しました。
そのまま苦情が来ることもなく、数年が経過した頃だったと思います。
研修講師になっていた私は出張先でこのベテラン職員さんと初めて会いました。
「今も使ってるわよ、似てない似顔絵スタンプ」と大笑いしながら握手を求められました。
送られた写真とは別人のようにハツラツとした可愛い女性。
とっさに、未熟者の私は言い訳を考えていました。
ところが、私が口火を切る前にベテラン職員さんが「描きにくい不明瞭な写真を送ってごめんなさいね」と詫びてくださいました。
そして、「スタンプを押した葉書を送ると、似ていないから『これ誰?』ってことになるの。でね、『これが本物ですよー!』って挨拶に行くのよ。お客さまとの会話のきっかけになるし、話が弾むのよ。」
似てないことを売りにして下さるなんて、なんて機転が利く素敵な人でしょう。
言い訳を考えていた自分が恥ずかしくもありました。
ピンチをチャンスに変えられるのは、彼女のように責任転嫁をしない人だろうと考えた出来事でした。